1年前の今日

2002年3月10日
1年前の今日。
最高の記念日になるはずだった。

1年前の今日。
死ぬ計画を実行するはずだった。
 
 
1年前の3月10日。
両親が山岳会の遅い新年会に出かけて夜遅くなる日だった。一人の時間は確保されていた。
薬も事前に用意していた。アルコールなら腐るほどある。用意はできていた。
 
 
 
 
 
 
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今思い返すとこの時期はおかしかった。

大学に入ってだんだんと兆候が出てきて、1年の夏にはリストカットが再発していた。
年末には過呼吸を起こすようになっていた。
自分がいらなくて仕方なかった。
自分に「好き」をくれる相手が怖くて仕方なかった。気持ち悪かった。

2年の春には過呼吸で発作が起き、危なく病院に送られるところだった。
夏にはリスカが止まらなくなっていた。常に腕にはばんそうこうが貼られていた。当然長袖を着ていた。不眠が始まった。なにをしても眠れなかった。眠れたと思っても15分から30分。その間ずっと夢を見ていた。
病院にはいけないから市販の薬を買ってごまかしていた。効かなかった。
大学2年生の1年間の記憶なんてほとんどない。
学校も休みがちで、単位もなんとか取れた…といったものがいくつかあった。そういえば警察のお世話になったのもこの年だった(苦笑)。

学校が春休みに入って、1月末から教習所に通いだした。相変わらずリスカは止まらず、吐いてばかりいた。それでも半日くらい教習所に缶詰にされていて気がまぎれた。

ちょうど初めてリスカをしていることを人に言ったのがこのときだった。
はじめは軽い気持ちだった。ずっと様子が変だった私を気遣って「どうした?」って何度もきいてきた。
あんまりにもしつこいんで、あんまりにも鬱陶しいんで、困らせてやろうと思った。同情して涙でも流すのかと思った。そうしたら笑えるのにって。
でも違った。
真剣に話を聞いてくれた。切らなくなるように考えようといってくれた。大切な友だちだといってくれた。「そんなに血が見たいんなら俺の腕切ってやるから」って言ってくれた。

だけどこれが間違いだった。私にはまだ早すぎた。話してしまったらよけいに怖くて、頼ってしまいそうで、身動きが取れなくなった。切りたくて、切れなくて。切ったら捨てられてしまうと思うと怖かった。

約束から3日?4日?そのくらいでもうどうしようもなくなった。ちょっとくらいなら切ってもいいかな。そう思った。でもやっぱり怖くってなかなか切れなくて、しばらく悩んだ。でももういいや、って。捨てられてもいいやって投げやりになって切った。
うっすらと血の滲んでくる腕を見て後悔した。すっごく後悔した。怖くて怖くて仕方なかった。もう捨てられると思った。もうダメだと思った。気がついたらボロボロ涙流しながら笑ってた。笑いながら切ってた。

それでも捨てないでいてくれた。
それでも友だちでいてくれた。
だけどもうダメだった。どんどんどんどんおかしくなっていった。壊れればいいのにって何度も思った。だけど壊れてなんてくれなかった。

教習所も終わって、ある日突然死のうと思った。そう思ったら毎日が楽しくて仕方なかった。上機嫌で過ごした数日。
3月10日の前日、今までお世話になったし、最期にごはんでもと思って話を聞いてくれた友人に声をかけた。残念ながら予定があるとかで一緒に食事は取れなかった。最後の晩餐はできなかったかと思った。

当日。
バイトのあと家に帰った。予定通り誰もいない。
少し疲れていたから横になった。もうこれで終わりだと思ったら気が楽になった。
気がついたらうたたねをしてしまった。
足音を聞いた気がした。リビングの横を通る、砂利を踏む足音。よく考えてみれば雨戸がしまっているんだから聞こえるはずはない。テレビだってついていた。

だいぶ時間が過ぎていた。ちょっとしたら電話がかかってきた。もうすぐ家に戻ると両親からだった。

今から薬を飲んでも無駄だと思った。
帰ってきた両親が慌てて病院に連れて行って、胃洗浄されて終わり。近所であそこの娘さん…って噂されるオチまでつく。
なにも痛い思いなんてしたくない。
ああ、失敗したんだって思った。
できなかったんだって思った。
やるんだったらちゃんと死にたかったから。
 
 
 
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本当に、今思うと大学2年はひどかった。
ほとんどの記憶が残っていない。ぼんやりとした感じだ。
なにも感じなかった。辛いこともなかった。辛いことがわからなかった。楽しいことがあっても楽しめなかった。どこか遠くから自分を眺めていた。
涙なんてちっとも出てこなかった。伯母が癌で死んだときも、好きだった先輩が事故で死んだときも。

伯母が死んだとき、祖母が泣いていた。みんな泣いていた。私が代わりに死ねばよかったのにって思った。いくらでも代わってあげるのにって思った。いらないから。 

頭も心も真っ白で、カサカサだったあの頃。
なにも感じなかった。
拒絶だけの毎日。
違和感しかなかった世界。
それからもう1年が経ったんだ。

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